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14章 「生かされて……感謝」 |
小林 孝子 |
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○ 不思議な知らせ 主人は神戸の伯父さまの7回忌法要で昨日から参詣し留守である。 平成7年1月17日、早朝3時過ぎにめざめた。 詩人坂村真民先生が、寅の一刻の祈りをされている時間である。 午前3時30分(寅の刻)、宇宙からの霊気が一番強く感じる時刻である。 屋外に出た。空気が厳しく澄みわたった空で、星々がキラキラと輝き、霊気がみなぎる朝である。気持まで凛々として、清らかな思いのひと時であった。 真民先生は、いつもこの時刻、世界の平和を祈念しながら、愛媛県一級河川重信川のほとりで、毎朝お祈りをなさっておられる。 私も先生と同じ思いで、昴星の輝きを見たり、木々から霊気を感じた。 すがすがしい気持ちがいっぱいで、これから眠るのはもったいないなと般若心経の写経をする。1枚2枚と書き終え、このうれしい気持を真民先生に伝えたい、そんな思いでペンを取る。書き終える頃、ガタガタと異常な大きな音がする。
おかしい、風かなあ? ちがうちがう、やがて大きく揺れる。地震だ……。すぐテレビのスイッチを入れた。ニュース速報、地震だ……。震源地は淡路島洲本から神戸の須磨のあたり……。震度6……。 香川県中讃地方(我町)は震度4と報じられた。 被害はない様子……。でも何かしら胸騒ぎがしてならない。真民先生に「主人が神戸(須磨)へ行っている。地震が心配である」と、一言つけ加えて書き終えた。夜が明け、その日は娘宅へ出かけた。地震のニュースが1日中報道された。 家々が倒壊、各所で火災となり、大変な惨状である。心配で心配で、心落ちつかず。神戸の親類(順照寺)へ何度も電話をする。 通じない。何10回となく受話器を持つが通じない。心配がつのる。不安で過ごした時間がとても長い長い時間であった。 夜9時前のニュースで、橋本弘子さん、横井等さんが犠牲者であることが知らされた。 しかし誤りであって欲しいと祈る。心配で心配でいてもたってもいられず、知人で高知県の竹崎様に電話をする。「9時過ぎにもう一度お電話下さい」との事。 再度9時過ぎに電話をする。竹崎様から「御主人は生命に別状はないが、腰を痛めているので動けない」との知らせであることを告げられた。 竹崎様は御信心なお方で、御夫婦でお四国さんを100回以上巡拝されておられ、私達を御加護下さっているお方である。竹崎様から知らされたお言葉は、誠のことばであると信じたい。有難い、お助け頂いたと、無意識に両手を合わせていた。 あとは胸がつまり、言葉にならなかった。 夜9時半頃、新須磨病院の医師山本光雄から電話を頂いた。「御主人は生命に別状はないが腰等に打撲を受けている。御主人から家族が心配しているので知らせて欲しいと申されたのでと……」うれしい一報が届いた。 竹崎様から、一足早く知らされていた事態と同じである。 なんと不思議な事である。ありがたい。 すぐに仏壇の前に手を合わせた。 その時、電話が鳴った。桑嶋千鶴子さんからである。心配して電話を下さったのである。 ニュースで弘子さん、等さんの名前を見たので、とても心配で……里の兄松内昭徳夫婦、姉松内明敏夫婦、桑嶋冨泰、千鶴子さん。従兄横井清、正明さん達が心配のあまり私宅へかけつけて下さった。 神戸の家族や参詣した皆さんの安否が心配で、ただ無言で時を過ごす。私は一心に写経をする。 1枚終え、また書き始める。ただただ主人の怪我の状態が少しでも軽くある様にと、一心に祈り写経をする。涙が溢れ、溢れながらも書き続け、朝がきた。 |
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