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10章 七回忌に寄せて |
桑嶋 冨泰
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1. はじめに 私は、震災の当事者ではない。それ故、真実の苦しみや痛みはわからない。いまだ現役の身であったため、仕事の都合で皆より先に帰郷せねばならなかった。その結果、災難に会わずにすんだ。人はそれを好運というが、それだけで片付けられないものがある。 今もなお、九死に一生を得た人たちが、心の痛みにじっと耐えている姿を垣間見る時、どうしても傍観者の気持ちになれない。思案の末、せめて自分にできることは、震災のあと見聞した有りのままの様子を、拙きは拙きままに書き残しておくこと、それしかないと思うようになった。 ふと、文雄さんが長い入院生活の中で、日々の出来事を刻明に記録していたことを思い出した。 「そうだ、みんなで震災にまつわる思い出を書こう。そして文集にしよう」との思いに至った。早速、そのことを文雄さんや賢治さんに話しかけたところ、双手を上げて賛成してくれた。意を強くして、去る1月14日故秀麗叔父の13回忌の法要の折、神戸の皆さんに諮ったところ、即座に賛同していただき、しかも、秀和さんが編集の労までとってくれることになった。 思えば、叔父の仏事に、文集の話がまとまったのも、仏縁のおかげと言うほかない。みんなの思いが綴られて、今は亡き弘子さんや等さんへの鎮魂になれば幸いである。 平成13年1月15日 |
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